「約束する側」と「約束される側」、約束の主体はどっち？

まだ、仕事を始めたばかりのころ、

薬をちゃんと飲まないで病気が悪化することを繰り返すAさんを担当していました。

「させられた」約束は守れない

まだ若かった私は、面談するたびに、Aさんが薬を飲まない理由を尋ねては、薬の必要性を説明して「Aさん、お薬ちゃんと飲んでくださいね！約束ですよ！！」と言っては、Aさんが「ハイ」ということに安心していました。

でも、結局、Aさんはお薬に抵抗があって、飲まない日が続くのでした。

こうして「約束させる」ことを繰り返す、これが約束の主体が「約束させる」側のパターンです。

今思えば、あまり相手の気持ちを考えていなかったなと思います。

私が産休・育休に入り、その間、Aさんの担当は別の人がしていました。

育休が明けて、久しぶりにAさんと面談したときのことです。

「あなたと約束したい」「明日から毎日休まずデイケアに通う」とAさんが言うのでした。

「デイケアに毎日通う」ことは、それまでのAさんから考えれば、薬を毎日飲むこと以上にハードルが高いことでした。

「100％を目指すと疲れちゃうから、『なるべく』にしましょう」「休むことが大事なこともあるから」と話しつつも、私は「約束する側」のAさんから、主体的に約束されました。

なんとAさんは、そこから半年、私が異動で担当を変わるまでデイケアに通い続けました。

ただ通い続けただけではありません。

「生き生きと楽しそうに通い続けた」のです。

相変わらず、お薬は飲んだり飲まなかったりしていましたが…

約束の意味を、改めて考えさせられた出来事でした。

本当の約束は誰かに強制されるものではなく、自分自身で「ここから先」を選びとっていくときにするものなのかもしれないと、思います。