ある継母のメルヘンには、たくさんの伏線があり、現段階で回収されているのか、されていないのかがわからないものも多くあります。
大きな謎として、次の3つがあります。
- 複数の女性たちの死因や体調不良の原因
- リシュリュー枢機卿がシュリーに執着する理由
- ヨハネスが何をしようとしてシュリーを選んだのか
この他にネックレスにまつわる不穏な空気も、謎のひとつでした。
今回は、第93話2部28話からの「記憶」の章で解き明かされる、シュリーに贈られたネックレスの謎について考察します。
シュリ―に贈られる3つのネックレス
シュリ―に贈られる豪華なネックレスは、3種類です。
- ジェレミーからのバースディープレゼント(第72話2部7話 その年の夏(7))
- テオバルト皇太子からの贈り物(第93話2部28話 記憶(1))
- ヨハネスが生きていたころに匿名で届けられたネックレス(第94話2部29話 記憶(2))
物語に登場するのはこの順番ですが、時系列にすると3.→1.→2.の順です。
3.のネックレスの贈り主は、現時点でははっきりしていません。
ネックレスにまつわる不穏な記憶
物語の中では、第33話からネックレスにまつわる不穏な記憶の断片が顔を出し始めます。
- テオバルト皇太子から告白されたとき(第33話 冬を越えて(20))
- ジェレミーの裁判でヨハネスの死の間際の状態を問われたとき(第51話 守護者(10))
- ヨハネスの書斎に近づいた際の不安(第86話2部21話 近付く影(2))
徐々にシュリ―は、何か大切なことを忘れていることを自覚していきます。
・・・ヨハネスの部屋 この部屋の前を通り過ぎる度に 少し胸が苦しくなる まるで頭に暗雲が広がっていくような感覚
おかしいわね もっとも最初に感じるべき恋しさは どこに隠れてしまったのかしら
ある継母のメルヘン 第86話2部21話 近付く影(2)シュリーの自問
匿名で贈られたネックレスと ヨハネスからの暴力
ネックレスにまつわる不穏な記憶の原因が明らかにされるのは、第94話になってからです。
ヨハネスに嫁いで当主教育を受けていたシュリ―のもとに、愛を語る言葉と共に豪華なネックレスが贈られてきます。まだ幼かったシュリーは、ヨハネスに報告するという適切な判断ができず、ネックレスを古着ばかりのチェストにしまい「毅然として断ろう」と考えます。
私の立場に同情している それで慰めようと… でもどうして?
どうして愛を語っているの? 一体こんな時はどうすれば…
返そう 誰から贈られたのかさえ分かれば返せる
侯爵夫人として 丁重にきっぱり こんなことをされるのは不愉快だと言おう
それでいいはず そうきっと それが正しいはず
ある継母のメルヘン 第94話2部29話 記憶(2)シュリーの心の声
そのネックレスを見つけたヨハネスが、怒りで理性を失いシュリーに激しい体罰を加えます。
ヨハネスの脳裏でルドヴィカ前皇后を皇帝に奪われた過去が重なり、シュリーを閉じ込めた後、血を吐いて倒れます。
別人のように怒り狂うヨハネスの姿と、ヨハネスが死んでしまうという恐怖は、シュリーの心的外傷体験となり、心の奥底の箱に封印されます。97話2部32話記憶(5)では、実際に記憶が箱に封印される様子が描かれています。
ヨハネスとの関係を思い出した時、豪華なネックレスを見た時、そして愛をささやかれた時に出現する、頭痛やネックレスの残像、成長したジェレミーをの顔がヨハネスに見えてしまいおびえるのは、この封印された記憶のフラッシュバックだと言えるでしょう。
また、シュリ―が発病した夢遊病の原因も、消化しきれないトラウマが原因となっています。
シュリ―に匿名でネックレスを贈ったのは誰?
ヨハネスの生前、シュリ―に匿名でネックレスを贈った人として、皇帝、テオバルト皇太子、黒い影の人物(教皇庁の策略?)の3人が疑われます。皇帝とテオバルト皇太子はシュリ―を手に入れたいという思いから、そしてリシュリュー枢機卿などの教皇庁は策略として送ったことが考えられます。
皇帝
ヨハネスがシュリ―に折檻を加える際に「あの時のように大人しく 奪わせると思うか!!」と怒りをあらわにしていることから、ヨハネスは皇帝を疑っていると思われます。
何を約束された? 世界をその手に握らせてやると言われたのか?
あなたのことを理解していたのは私だ 奪われてたまるものか また私の目の前からー
あの時のように大人しく 奪わせると思うか!!
ある継母のメルヘン 第96話2部31話 第93話2部28話 記憶(1~4)
ジェレミーの裁判の後、皇帝はシュリーの緑色の瞳とルドヴィカ前皇后のレモン色の瞳を重ねて自問します。
結局 今回も耐え抜いたのか
ある継母のメルヘン 第53話 守護者(12)皇帝の心の声
誰のものになろうと 気にしたくなどなかった
音もなく消える時まで 目をそらしていればいいのだと信じていた
なのに 最後まで私の前に立ち まだここにいるのだと叫んでいる
-こんな残酷な方法で 私に復讐でもしようというのか ヨハネス
「今回も」ということは「前回」があったということで、前回はシュリ―が記憶を封印する形で耐え抜いたということかもしれません。
テオバルト皇太子
”これはチャンスかもしれない 3年前に叶えられなかった 彼女の隣を独占する機会が―”
この言葉の直前にリシュリュー枢機卿が「2年前に亡くなった夫の遺言で」と説明しているので、最初のネックレスの送り主がテオバルトである可能性もあると考えられます。
黒い影の人物(教皇庁?)の策略
既にエリザベート現皇后と婚姻している皇帝が、ヨハネスが生きているうちに軽はずみにシュリ―にネックレスを贈ることは考えにくく、まだ14歳前後のテオバルト皇太子が贈ったのであれば幼さが残る手紙になっているはずです。ヨハネスが血を吐くのを陰から見ていた黒い影の人物がシュリ―を陥れるために、皇帝や皇太子を装って贈ったものだったのかもしれません。
皇室の紋章のあるネックレスを贈ったテオバルト皇太子の思惑
2つ目のネックレスに謎はありません。ネックレスを贈った理由として、テオバルト皇太子自ら「賭博場が問題になる→介入がばれていない→(ノイヴァンシュタインの)謀反容疑のチャンス!恋人の証であるネックレスでシュリ―を保護してください!+ニュンベルンへの仕置きも忘れずに」とゲーム風に解説しています。
またシュリ―も、テオバルト皇太子の思惑を見抜きます。
やっとわかったわ あのルビーの首飾り…
度を越して豪華なうえに 皇室の紋章までついていた
まるで何かを「証明」しようとするかのように
愛情表現を越えた ほかの重要な目的があるとしか思えない
ルーカスの正体が明らかになり ノイヴァンシュタインまで追及を免れない事態になった時
彼が私の救世主を気取るためのもの
私の孤立と 悲しみと 絶望を待つ首飾り
かれはなぜ これを 愛だと言うのだろうか
第109話 2部44話.軌道(3)シュリ―の心の声
現時点でシュリ―はテオバルト皇太子に謁見して、ネックレスを返そうと考えていますが、前回ヨハネスの怒りを買った際には独断で動いて失敗しています。いずれかの時点でシュリ―はそのことに気づき、エリザベート現皇后またはニュンベルン侯爵といった、味方の年配者に相談して解決していくことと思われます。
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